USAWALTZ on the SNOW FIELD




 この平野にも雪が積もった。
 それを見たUSAたちは、次々と空から“ふじちゃく”した。

 平野に積もった雪の深さは、軽く2メートル以上はあるだろうか。ぼす、ぼす、という軽やかな音と共に、USAたちは雪の上にどんどん“ふじちゃく”していく。雪面に、USAのカタチをした穴が次々と空いていった。真っ白なUSAに真っ白な雪。少ししてから、USAたちはおのおの穴からぴょこぴょこと顔を出した。
 空では、まるで雲のようにオットセイたちがのんびりと泳いでいる。
 USAたちは互いの顔を見合わせてから、頭をぷるぷるっと振って耳に積もった雪をはらった。ジャンプして穴から飛び出す。より正確には、“ジャンプしたようにふわりと雪の上に浮かんで”舞い降りた。

 そして、USAたちは雪の上でダンスをはじめた。

 手をつないでワン・ツー、ワン・ツー!

 音楽が聴こえてきた。USAたちは輪になって踊りながら、くるくると廻りながら、冷たい風に冬の到来を感じ取っていた。黒と白の世界。わたしたちの季節だ。どこかから鈴の音も聞こえてくる。遠くに見える森がざわめいているのだ。
 USAたちは飽きるまでしばらく踊り続けたあと、お互いの手を離すと、めいめい別々の方向へと飛んでいった。ある者は森に。ある者は空に。ある者はすぐそばの平野まで。
 何匹かのUSAはその場にとどまって、さきほど“ふじちゃく”して穴がぽこぽこ空いた辺りをぐるぐると廻り、周囲の雪をはらい始めた。先ほどまでのダンスで、あたりには円状の広い“除雪済み”の空間が出来上がっている。それをより完璧に、美しい円に仕上げてゆく。くるくるくる。ぱたぱたぱた。白を次々に掻き分けて、黒い地面がくっきりとあらわれはじめた。
 すぐそばの平野に向かっていたUSAたちが戻ってくる。USAたちはそのちいさな腕の中に、沢山の雪球を抱えていた。大事に丸められた雪球は、どれもが少しづつ違う大きさと、違う円のかたちをしている。平野から戻ったUSAたちは、円の中央からすこし離すように雪球を積み上げておくと、脇に避けてからさらに次のUSAたちを待つ。少しの間。USAたちはまだ何もない広場の中央部分を見つめている。何匹かのUSAたちは、積み上げられた雪球の中から、自分のとっておきの一つを探して、手に取った雪球を比べあっていた。

 近づいてきた――。今度は大物だ。森に向かったUSAたちによって、1本の巨大なもみの木が運び込まれてきた。何十匹ものUSAたちが大木を支えながら、こちらにふわふわとやって来る。USAたちは広場に近づくにつれて、ゆっくりとそれを傾けながら、丸い広場の中央にそのまま突き立てた。どしん、という地鳴りと共に、もみの木の根元は地中深くに沈み込んだ。
 そこから、待ち受けていたUSAたちがいっせいに枝に群がる。
 おのおのが手に持った雪球を枝にそれぞれくくりつけてゆく。大きさはふぞろいでも、USAたちが枝につけ終わりもみの木から離れると、やがてそのどれもが、どの色にも似ていない不思議な光を放ち始めた。
 USAたちはそれを見つめている。
 もみの木に浮かぶ美しい色彩。黒い空に映える、綺麗な色だった。

 あとは流れ星を待とう。

 その時だ。空のはるか向こう、普段は上へ上へと昇ってゆく動物たちが、一斉に真下へと急降下をはじめた!
 鳥、くま、ぞう、カメ、ありとあらゆる動物たちが眼下のツリーを目指して真っさかさまに落ちてくる。その勢いで、周りに浮かんでいる星くずたちが巻き込まれ、引き寄せられて、動物たちの周囲に巨大な流星群を発生させた。
 動物たちは平野のもみの木のすぐ傍まで急降下した。そして、地面にぶつかるギリギリのタイミングで急旋回し、横に滑るように再びこの広い平野を飛んでいった。
 猛烈な風。USAたちの耳がばたばたと揺れる。
 びゅうびゅう。無数の動物たちが雪の平原を、そしてその向こうの森の上を走ってゆく。その風もやがて収まると、辺りにはまた一瞬の静寂が訪れた。空に向かっていたUSAたちが最後に到着する。その場に居たUSAたちはツリーのてっぺんに顔を向けた。待ち望んでいたものが出来上がっていた!
 動物たちに引き寄せられて一緒に落下した、無数の星くずたちが集まって、ツリーの上にひとつの新たな星を生み出していたのだ。
 USAたちは拍手した!
 また音楽だ。

 素敵なことがもう一つ、起こった。
 空から、他の動物たちにすこし遅れて、くじら達がこちらに向かって飛んでくる。今度はこの平野の上空を、ぶんぶんと旋回しながらまた向こうの森へと消えていった。くじらの大きな体に引き寄せられて、さきほどよりも多くの流れ星が一緒に撒き散らされたのだ。空いっぱいの流れ星に、白く美しいくじらの姿が空にきらきらと浮かんだ。何という光景だろうか! USAたちはぴょんぴょんと撥ねながら、その美しい光景と共に、くじらたちに最大のエールを送った。

 くじらたちが遠くの空に戻ってゆくのを、USAたちは“目を閉じながら”見送った。

 USAたちは誰のためにこのツリーを準備しているのだろう? 彼らはいつも、目を閉じたまま空をゆらゆらと泳いでいる。年に一度、たった一度だけこの土地に舞い降りるのも、彼らからすれば“泳いでいる”ことの一部でしかなかった。目を閉じたままのUSAたちにも、動物たちにも、このツリーを見るものはいない。なのに、ねぇ、どうして?
 その問いに答えるものは居ない。USAたちも動物たちも、やっぱりいつも通り、ただゆらゆらと泳いでいるだけなのだ。
 でも一つだけ確かなことがある。USAと動物たちが用意したこのクリスマスツリーは、本当に本当に、きれい!
 どうやら準備は整ったね?

 ……世界中のみなさんに最高の安息と幸福が訪れますように!

『さぁ、クリスマスだよ!』